偽の両親と25年間過ごした青年がはじめて体験する、
現実世界での物語。
忘れていたことを思い出させてくれる、宝物箱のような映画。
Contents
ざっくりあらすじ
25年間、地下のシェルターでクラス青年・ジェームスは、子ども向け教育ビデオの「ブリグズビーベア」が大好き。両親と何不自由なく暮らしていたある日、自分が監禁されていたことを知る。はじめて体験する外の世界で、ジェームスは何を想い、何を糧に生きていくのか……?
子ども向け教育ビデオ〈ブリグズビーベア〉
動向の開いた焦点の合っていない目が、なんとも奇妙なビジュアル。
子どもの頃に着ぐるみという存在に抱いていた「不吉な感覚」が蘇ってくるような風貌だが、動いている姿をみると結構かわいい。
25年間シェルターで暮らしている〈ジェームス〉
ブリグズビーベアだけを観て育ったため、彼にとってはブリグズビーベアが唯一の友人であり唯一無二の大切な存在。
常にストーリーを研究し、部屋もグッズで埋まるほど。
その情熱が彼を動かし、想像もしていなかった展開を巻き起こす。
ジェームス役は、〈カイル・ムーニー〉というコメディアン・俳優。
オタクの風貌がとても似合っていて、でも顔が整っていてかっこいい俳優さん。
ジェームスの父親役はなんと〈マーク・ハミル〉!
渋めのお父さん役で、良い味出してる。笑
キーパーソンとなる人物なので、ファンは必見。
感想(ネタバレなし)

25年間監禁されていた…という不穏なストーリーと、
ブリグズビーベアのちょっと怖いビジュアルを見たときから、
「この映画、ぜったいおもしろい」と確信していた。
そしてその予感は見事的中!!
「わたしには一生縁がない映画だわ〜」なんて思っているそこの映画好きのあなた!
騙されたと思って観てほしい!
- 大切なことを思い出させてくれるストーリー
- 作り込まれた世界観
- 優しさと情熱に溢れている
● 大切なことを思い出させてくれるストーリー
一見、セリフの少ないフワフワとしたファンタジー映画かな? と思わせるビジュアルだが、まったくそんなことはない。
むしろ、わかりやすくてテンポもよくて、ダレることのない展開!
はじめて外の世界に出たジェームスと同じように、観ている側もワクワクしたり、悲しくなったり、笑ったり、切なくなったりしてしまう。観客もまた、ジェームスに心を動かされる1人になるのだ。
わからないことだらけ・理解者もいない中で、ただまっすぐに好きなことへ突き進んでいくジェームスの姿は、大人になった私たちが忘れていた大切なことを思い出させてくれる。
「好きなのになんでやめたの?」
というジェームスの言葉に、あなたもハッとさせられるはず。
好きなことがある人、大きな夢を持つ人、映画好きな人にぜひ観て欲しい。
● 作り込まれた世界観
ブラウン管に映し出された一昔前の映像。
ちょっと不気味な着ぐるみ。
ジェームスが暮らすシェルター。
ブリグズビーベアのストーリーやキャラクター。
物語のはじめに登場する全てものが、とにかくリアル!
服やベッド、おもちゃの小物などなど、実際に使用されているかのようなリアリティを持っていて、なおかつモチーフがどれも懐かしい。子供の頃の自分と重ねてみてしまい、ジェームスへの感情移入が自然とできる。
そのリアルさと懐かしさ、そして不穏な雰囲気も相まって、一気に物語に引きずり込まれる。
そんな冒頭の世界観のおかげで、ブリグズビーベアに少なからず愛着が湧いてくるだろう……笑
だからこそ、ブリグズビーベアを愛してやまないジェームスのことを応援したくなってしまう。
● 優しさと情熱に溢れている
登場人物すべて、優しさに溢れている。
モブキャラでさえ、とっても愛おしくなる。
信じられないくらい優しくて、ポジティブで、愛に溢れた映画だ。
登場人物がそうなる理由はやっぱり、ジェームスの人柄・行動力にあるだろう。
“たとえ応援してくれる人がいなくたって、好きなことをやり続ける”という単純なことを、私たちはいつの間にか忘れてしまっている。
それを思い出させるかのように、全力で好きなことに向かっていくジェームスの姿は、きっと観た人の心を強く揺さぶるはず。
彼の行動力・情熱に周囲の人間が動かされていくシーンで、笑顔と涙がこぼれてしまう。
◯ とにかくクリエイターの人に観て欲しい
好きなことに打ち込んでいる人、夢を諦めたひと、全力で夢を追っている人、そんな創作する人々への応援歌となる映画だと断言できる。
葛藤・不安・成長という、制作者につきものであるステップを歩むジェームスに、共感せざるを得ない。
今頑張っている人も、そうでない人も、観た人の背中をポンっと押してくれるような、そんな映画。
世界がなんと言おうと、誰にどう思われようと、人を巻き込んで楽しんだもん勝ちだ。
誰もが体験したことがあるだろう、好きなもので人と繋がる喜び。
信じれる仲間がいるだけで、こんなにも人は変われる。強くなれる。
また一歩踏み出してみようか、そう思わせてくれる映画だ。
感想(ネタバレあり)
「これ絶対おもしろい」って思ってはいたけど、けど、
まさかこんなにいい映画だとは思わなかった……!
誘拐されてから25年間、偽の両親と暮らし、さらに友達は偽の教育番組のクマ?!
というあらすじがインパクト強すぎて、正直その後の展開はまったく予想できないまま鑑賞。
なので「本当に面白いかな…?」という不安も抱えつつ鑑賞したけれど、そんなの吹っ飛ぶくらいによかった。本当に良かった。
正直ストーリーは御都合主義なところもある。
だけど、それでいいんだよな、と思わせてくれる。
世界にどう思われようと、体験している本人や周りの人間が楽しければ、その世界はまるで御都合主義のように輝いて見えるんだと思う。
きっと彼らはそこまで行けたんだ。
そこまで到達できる人間は、好きなことを信じて貫いてきた者だけなのだろう。
ずっともがいている人、諦めてしまった人、そんな人たちを底から引っ張り上げてくれるような、強くて優しい映画だった。
「仲間を集めたら、あとは前に進むだけ」
この言葉にすべて詰まっていた。あのキラキラと輝いていたシーンは、笑みと涙がこぼれて訳わからなくなった。笑
きっとこの先も、この映画を思い出して頑張れる時が必ずやってくる。
こんなにも勇気を与えてくれる映画に出会えたことが幸せだし、制作者には感謝でいっぱいだ。
サントラも最高に良いのでぜひぜひ。
この映画で気づいたけど、わたし〈アコギ×ピアノ〉のサウンドに弱い……笑